最初に・・・
・2024年現在、「MVアグスタはどうなったのか?」ということで、調べてみました。
・まずはこのタイトルの話の前に、関係する用語を整理していきます。
・この記事にこれから出てくる中国メーカーの「Qianjiang Motorcycle:QJモーター」という会社について。
Qianjiang Motorcycle(銭江,钱江,チェンジャン モーターサイクル)
・Qianjiang Motorcycle(QJモーター,銭江モーター)は、中国の浙江吉利控股集団有限公司(ジーリー)が所有するバイクブランドになります。
・ジーリーは最近話題になった「Zeekr」のブランド名でEV自動車を製造、販売している会社ですね。
画像引用元:https://www.zeekr.eu/
・このジーリーが所有しているブランドはいくつか有名なものがあり、「ボルボ・カーズ」、「ポールスター(ボルボの高級EVブランド)」、ロータス… なども所有している多国籍企業のような中国資本の企業になります。
・調べてみると、ベンツ子会社だった「SMART」(小型自動車メーカー)は、今やこのジーリーとの合弁会社になっていたんですね。
・また、このブログでも何度か取り上げている「ベネリ(Beneli)」もこのジーリーグループですね。
↓ベネリについてはこちら↓で簡単にまとめています。
提携したバイクブランドとは?
・先ほど挙げた「ベネリ」は「提携」ではなく、すでにジーリーグループの「傘下」となっているバイクブランドですね。
・このジーリーは所持している自動車ブランドからもわかるように、かなりの技術力や製品精度を確保しています。そのこともあり、提携している(しようとする)バイクメーカーも多いです。
↑2024年度のQJモーター(MOTO2) チーム:グレシーニ・レーシング
画像引用元:https://global.qjmotor.com/competition.html?catid=30
・近年ではMoto2にも進出したり、SBKへの進出しようとして開発していたりと、レース色も出してきている中国ブランドです。認識的には中国のCFMOTO(KTMやヤマハと提携)みたいなイメージ戦略で欧州に食い込んできているメーカーだと思います。
→しかし、2024年Moto2クラスの日本GPレースで、グレシーニ・レーシングのスポンサーを降りさせられました。
→グレシーニのライダー「マヌエル・ゴンザレス」が日本文化であるハチマキを着用したことを受け、解雇を要求してきたのですが、グレシーニが「それならお前らのスポンサード要らない」と言ってくれたわけですね。日本人にとっては、鉢巻なんで日本文化では当たり前のことなので、そんなこと1つで何怒ってるんだろうといった感じなのですが、中国としては許されなかったのでしょう。
・ハーレーダビッドソン
・「ハーレーダビッドソン」はQJモーターと提携したバイクメーカーの1つです。提携自体は2019年ごろまで遡ります。
↑X500…個人的には下記のX300よりもルックスが好きです。
↑X350(ハーレーの400cc未満:日本でいう普通二輪免許で乗れるバイク)
・これらのバイクはジーリ―傘下の「QJモーター」と「ハーレーダビッドソン」が提携して開発(OEM契約)され、市販化されているバイクですね。一時期、音沙汰なくなっていたため、もう出ないかなと思っていましたが、しっかり日本でも販売してくれましたね。
・ただ中身(エンジン)としてはベネリの350や500と同等のものなので、乗り味でハーレーの歴史をどのように表現できているかが大事かなと思います。
・またネイキッドスタイルなので、なぜアメリカンスタイルのバイクにしなかったのかが・・・おそらくアジア・中国ではネイキッド至上主義なのだと思いますが・・・ハーレーブランド的にはアメリカンがほしいところです。
参考元:https://jp.reuters.com/article/idUSKCN1TK2ZS/
・MVアグスタ
・当初、MVアグスタと先に提携したのは、中国の企業「Loncin(ロンシン、隆鑫通用動力)」でした。エンジン単体でも売っていて、よくヤフオクとかにも流れていますよね。
・Loncin(ロンシン)はバイクエンジン年間300万基、ATVであれば年間15 万台を売り上げるほどの大企業です。このロンシンは、バイクブランド(ロンシンとしてはハイブランド)として「VOGE Motorcycles」を所持しています。
→ロンシンのハイエンドブランド「VOGE」については↓以下↓で簡単にまとめています。
・このロンシンの所持する「VOGE Motorcycles」とまず提携した中国メーカーが「MVアグスタ」でした。
・2019~2020年ごろ、この提携によってMVアグスタが「350ccクラス」に参入することで大きなニュースになりましたね。その年のEICMAでも発表されてたかと思います。
・MVアグスタは歴史のあるイタリアブランドで、近年は大排気量中心のメーカーですが、アジアでの人気を無視できない状況だったのでしょう。
参考元:https://www.cycleworld.com/mv-agusta-joins-forces-with-chinese-giant-loncin/
・しかし、現在雲行きが怪しくなっています。ロンシンとの契約はおそらく破綻し、ロンシン提携発表から1年後くらい…2021年ごろ、MVアグスタは前述の「QJモーター」と戦略的パートナシップを結びました。
・さらにその後、そのQJモーター(ベネリ所有)の「544ccの2気筒エンジン」を使ったミドルクラスのアドベンチャーモデル「ラッキーエクスプローラ5.5」を発表し、これが販売されるものと思っていたのですが・・・
↑ラッキーエクスプローラ5.5
参考元:https://motorcyclesports.net/will-mv-agusta-debut-the-lucky-explorer-5-5/
・この「ラッキーエクスプローラ5.5」は、QJモーター製のエンジンとフレームで、「ベネリ TRK502」や「QJモーター SRT550」と共通です。
・同時期に発表されたMVアグスタ伝統の931cc3気筒エンジンを載せたアドベンチャーバイク「LXP orioli」(限定500台)のほうは発売中ですが、このミドルクラス「ラッキーエクスプローラ5.5」はグローバルな公式HPには載っていません。
*「LXP orioli」の一般向けモデル「エンデューロ ベローチェ」は日本でも発売予定です。
・現状「PIERER Mobilityグループ」(KTMやGASGAS、ハスクバーナ所持)との関係により、保留されているようですね。
・つまり、このQJモーター製のエンジンとシャーシを使用した「ラッキーエクスプローラー5.5」がどうなっていくのかは今のところ不明。。。
・2024年現在、MVアグスタブランド自体は、「KTM」を所持する「PIERER Mobility」が株式の半分以上を持ちましたので、実質PIERERグループとなったと言っても過言ではないでしょう。
・この「PIERER Mobility」とはKTMをはじめ、ハスクバーナやガスガスなども所持する会社ですが、インドの大手バイクメーカーである「バジャジ:Bajaj」と資本関係が強い会社です。
・つまりは・・・中国側かインド側かどちらと組んでいくか・・・最終的にインド側となったということでしょうかね?
・「PIERER Mobility」の資本にはインドメーカーのほかにロシア富豪・投資グループなども入っているし、そもそもKTMは中国のCFMOTOとかなり密接に関わっています。CFMOTOはKTMエンジン使いまくりですしね。
・しかし、そもそも2023年度時点では、MVアグスタの1000ccエンジンを使ってスーパーバイク選手権やスポーツバイクを開発し発表までしていた「QJモーター」がこの辺りをどう考えているのか。
↑EICMAでのQJモーターの「SRK1000」
画像:https://motorcyclesports.net/ja/qj-motor-makes-a-surprise-appearance-at-eicma-2023-ja/
・このバイクは、元MV AgustaデザイナーのAdrian Morton(エイドリアン・モートン)とPaoloが立ち上げた新会社「C-CREATIVE(Cクリエイティブ)」がデザインしたものです。
・エイドリアン・モートンのデザインで有名なのは、「MV AGUSTA SUPERVELOCE 800」ですね
画像元:https://www.mvagusta.com/jp/ja/product/superveloce/800
・美しいイタリアンデザインです!
2024年10月までのまとめ(疑惑含む)
①MV AgustaとQJモーターの関係は2024年現在、曖昧な感じになっている。
②アグスタブランドをKTMを所持する「PIERER Mobility」が買収したことで、大本はインド資本系となった(→ディーラー網はKTM関係が管轄する)
③QJモーターとアグスタの関係が破綻となると、エンジン等の開発や今後の計画は不明瞭(中国外の販売は保留中)。賠償も発生する可能性があるが、QJモーターとしてはすでにデザインを元MV Agustaデザイナーの会社へ委託している(EICMA2023で発表されたSRK1000など)
・なかなか、どたばたしていますね。MVアグスタの今後の動向に期待・・・
2024年11月末~ KTM大本より「民事再生」手続きの発表
・破産と発表しているメディアも多いですが、厳密には再生に向けた一歩を進む予定にはなっていますので、日本でいうところの民事再生へというところですね。
・KTMを持っている「PIERER Mobilityグループ」はついこの前アグスタを買収して、世間的にはイケイケムードかと思いきや、MVアグスタは持っていないというか持っているというか…
・とにかくここまで中国メーカーに買収されないように動いてきたのであれば最後まで頼みます。Kawasakiとbimota(ビモータ)みたいに、日本企業がMVアグスタ保護してくれませんかね。。私にお金があれば買い取ります。
・個人的にアグスタのデザインの歴史をみていると、同じくデザインが秀麗なYAMAHAが一番相性よさそうなのですが、今はファンティック(fantic)とけっこう仲良しですもんね。ミナレリヤマハの名残ですね。
・一応日本のKTMディーラーというかジャパンとしては何の問題もありませんとは言っていますが、KTMライダーからしたら心配しますよね。
・とりあえず「KTM」と言うブランドを存在させ続けるために努力しているとのことなので、中国やインドに買収されるといった結末は避けて、同じオーストリア仲間の「レッドブル」や「BRIXTON MOTORCYCLES」と手を取り合ってほしいと思います。
・ただ、中国の「CF moto」との関係や、インドのBajajとの関係をみていると…
・元KTMライダーの自分としても今後も情報を仕入れていきたいと思います。